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reminiscences 〜 思い出話 〜
reminiscences 〜 思い出話 〜  十二月。この国の古い呼び方では、師走とも呼ぶらしい。師匠も走るくらい忙しいという意味らしい。だからというわけでもないだろうが――いや、だからと言うべきか。今、衛宮の家は大忙しである。
 一年の汚れを一気に落とすための、大掃除を始めたからだ。
 今、私とシロウは普段は使われておらず、物置代わりになっている部屋を掃除している。昼間にも拘わらず、辺りにうずたかく積まれた荷物や家具などのせいで、部屋の中は薄暗いほどだ。この家の年期を感じる。
sister in law War
sister in law War  困ったな、眠れない。
 夜、私はいつものように自室のベッドに横になり、目を閉じていた。既に長い時間が経過している。普段なら、もうとっくに眠りに落ちているはずだ。しかし、今日に限って眠気は一向に訪れる気配がなかった。
 既に夏が過ぎて秋になり、寝苦しい夜も少なくなってきた。少し前までは、まだ扇風機を全開にしても額に汗が浮かぶくらいの残暑だったのに、最近では空気が肌寒く思える夜さえある。耳を澄ませば、庭で微かに鈴虫が泣いているのが聞こえてくる。室温は低く、さらに少しだけ開けた窓からは、しっとりとした冷たい風が入ってきて、頬を撫でる。
イリヤスフィールの日記帳
イリヤスフィールの日記帳  目を閉じる。それだけで、私の意識は昔の光景に飛び込んでいった。懐かしい……とても懐かしい記憶が、目蓋の裏に浮かんだ。あれは、確か倫敦の春の出来事だった。
 ――そうだった。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの身は、その時、英国にあった。英国の首都、倫敦。オリンピック開催も決まり、急ピッチで大小様々な開発が行われる活気ある都市に、私達は住んでいた。
天気晴朗なれども波高し
天気晴朗なれども波高し  「……恋人、か」
 思わず呟いたその単語は、何というか……大分、嘘っぽく響いて、我ながら驚いてしまった。いや、嘘っぽいというより、わたし自身が納得できなかったと言うべきか。
 ……否、間違いではない。わたしと士郎は、完膚無きまでに恋人同士の筈だ。
 肌さえ重ねたのだから、恋人と呼んで何ら不都合はないはず。だが、それなのに……未だにこの呼び方には抵抗がある。これは、おそらく――わたしが彼との関係が恋人だということをきちんと認識できていないと言うこと。頭の中のどこかで、そう思ってしまっているから、納得できないのだろう。
 それは、随分と……悲しいと感じてしまう事実だった。